「の、ノマ、なぁ、怒らんでよ、どないしたん?なぁってば」
「うるさい」
誰もいない保健室。先程までいた保健室にいるべき教師は今は職員室に戻っていて、俺とノマルは二人きりだった。
いや、それはいいのだけど、問題は、ノマルがめちゃくちゃ怒ってるということだった。そんなお怒りノマルに、手首を思い切り握られて。当然のようにものすごく痛かった。
理由はなんとなくわかる。たぶん、俺とみなちょんが、ケーキの食べさせあいをしていたからだ。あーん、と丁度俺がみなちょんからケーキをもらっているとこを、ノマルが入ってきた。
たぶん、妬いた、んだろうけど。でも、こんな怒らなくたっていいじゃないか。痛む手首を見、そしてノマルを見て、もう一度謝った。
「カンニンな、ノマ、ほんま悪い思てるから、」
「なにが」
「…み、なちょんとあーんしてたこと?」
言った直後、ノマルは急に乱暴にキスをかましてきた。ノマから初めてされた、それ。新鮮すぎて真っ赤になり、しかしそれどころではなかった。
「ノマ、こ、…怖いわ」
「うっせえ 怒らせるようなことしといて、しかもその理由をわかってねぇからだ」
「わ、わかっとらんことないもん!」
「わかってねぇだろ」
ぎゅう、と更に強く手首が握られて、太いとはいえない俺の手首は今にも折れそうだった。
「い、いたい、ノマ、痛い!」
「うるさいばかつこみ」
「ばかやあらへん!ていうか怒っとる理由、さっきんじゃちゃうのやったらなんなん?」
「わからんことないんじゃねぇのかよ」
「…せ、やけど」
うつむくと、ため息が聞こえて、そのあと、拗ねたようなノマルの声が聞こえた。
「俺以外のやつと二人きりでいんじゃねぇよ カロ以外、ダメだ」
「…え、」
それってつまり。
「ノマ、独占欲つよない?」
「んなことあるか」
「でも…えぇ、なんか…俺自由ないやん」
今度はこっちが拗ねたように言ってみせると、ノマルは、俺といるだけじゃ不服なのかよ、といつもじゃ言わないようなことを平然と言ってのけた。怒りのせいだとはわかってるが、顔が赤くなる。
「不服じゃ、ないけど」
「じゃあいいだろ」
「………うん」
おもわずうなずいて、直後、あああ、と頭を抱えたくなった。これじゃ自由に外をぶらつくこともできない。
でも。
「そのぶん、俺ともっとずっといてくれるんやろ?」
「…当たり前だろ」
「そか」
それならいいや、と楽観的にうなずいて、笑った。
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のまさんは独占欲強いと思います。きつねさんも強いと思いますが、もっと